日本食の海外展開が日本を救う、今こそ中小飲食事業者が海外に打って出る時

ohagi

アジアでは空前の日本食ブームということをご存知だろうか?

いや、アジアだけではない、アメリカでもヨーロッパでも、日本人が思う以上に、日本食の人気は極めて高い。

旨い
多様性
美しさ
健康によい

様々なイメージが持たれている。

アメリカに出張などで行った場合は、毎日いったい何を食べようか、、、食べるものがなく迷いに迷うが。
日本に来る海外の人たちの目当ては2つ。
美しい日本の自然と、もちろん、あらゆる地域にある最高の食材と料理である。

ラーメンに20億円?!

/

「博多一風堂」の海外展開後押し クールジャパン機構

官民ファンドのクールジャパン機構は8日、とんこつラーメン店チェーン「博多一風堂」の海外展開を後押しするため、計20億円規模の融資や出資をすると発表した。飲食店の海外進出は費用がかさむためリスクが高く、民間の融資が難しいため、官民ファンドで支援することにした。

 機構がチェーンの運営会社「力の源ホールディングス」(福岡市)に、欧米への出店資金として7億円を出資。さらに、最大13億円の融資枠もつける。

 博多一風堂は国内に69店、海外は47店ある。海外は中国や韓国などアジア中心で、欧米や豪州はニューヨーク、ロンドン、シドニーの5店にとどまる。今後は欧米などへの出店も増やし、2020年に海外を200店まで増やす。

日本全国の飲食業者が浮足立った?!

ラーメンに20億円である。融資と出資の合計ではあるが、20億円である。
しかも、国系のファンド。

日本の活路は海外。そして、飲食の先発隊として博多一風堂が選ばれた。

これまでにアメリカ、アジアと展開してきて、今後はこのファンドでヨーロッパを攻める。面白いのは、ラーメンにもファンドからお金がつくようになった点と、そうした資金調達を引き出すことができる人材もラーメン業界に入ってきている、ということだ。

 

すでに海外12カ国(地域)に展開している一風堂

2008年から海外展開している一風堂

一風堂が最初に海外展開した場所はニューヨークのマンハッタン。
日本のラーメン屋の風情と違い、ニューヨークの店舗は、Dining bar & Ramenといった趣だ。
夜は焼き鳥など、ちょっとおしゃれな和風ダイニングバーである。

筆者は2008年にニューヨークに少し住んでいたこともあり、オープンしたてのこの店舗に何度か行った。
ラーメン1杯が15ドルかそこらで、とにかく「高い!」という印象しか持たなかった。

それからわずかに7年。既に12カ国(地域)に46店舗も展開している。1年で7店舗の計算。2ヶ月に1店舗は新店舗を開店している勢いだ。

日本の外食産業はどれほど海外展開しているものだろうか?

数多くの外食店舗が海外展開している。その全てを取り上げたいところではあるが、申し訳ないが3社だけ、比較してみたい。

ラーメンとくれば、寿司(元気寿司)、そして日系ハンバーガーのモスバーガーである。

元気寿司とモスバーガーは早くから海外展開している。1990年代前半である。筆者も20年前あたり、アジアをバックパッカーしている中で、どこに行ってもモスバーガーを見つけることができたのには驚いたものだ。

健闘している。こうした海外に果敢に打って出ている日系ブランドは元気を与えてくれる。

ここで、海外の外食チェーンと敢えて比較してみたい。

  • スターバックス:18000店舗以上
  • マクドナルド:30000店舗以上
  • 鼎泰豊:116店舗

数百と数万の違いとは?

桁が違う・・・

カフェのスタバ。ファーストフードのマクドナルド。世界10大レストランにも入ったことがある鼎泰豊。(ディンタイフォンと入力すると感じが自動変換されることに少し驚く、漢字変換の一般名称としてもう登録されているようだ)

世界の鼎泰豊でも116店舗である。それを考えると、日系の海外展開は健闘していると言える。
(ちなみに、鼎泰豊のトップ3は中国が29店舗、シンガポールが19店舗、日本が14店舗。シンガポールはあの狭い国土に19店舗もある。ほぼ全てのショッピングモールに鼎泰豊がある感覚だ)

一方、アメリカを代表するチェーン店の場合は、1万を優に超える・・・

日本の海外展開とは、桁が2つも違うのだ。

とても美味しいとは言えないマクドナルド。(最近日本では問題となってますが)
まったく健康的ではないこのファーストフードが、全世界に3万店舗もあるのだ。

また、特に感動は覚えないコーヒーチェーン店のスターバックス(と、言いつつ、どこにでもあるので、ミーティングの待ち合わせ場所として、ついつい使いますが)。日本にオープンしたてのころは、フレペチーノだの、モカマキアートだの、いったいどんな飲み物なんだと興味津々、よく飲みに行った。

スターバックスを1万を越えるチェーン店に育て上げた立役者は、実はマクドナルドで世界展開で数万店舗に功績があった人をヘッドハンティングして、その部門トップに据えたのは有名な話だ。

調理をマニュアル化。ほとんどがセントラルキッチンにて標準製造。店舗側では、「温める」「揚げる」「冷やす」「切る(一定の大きさに)」程度の単純作業のみとなるように業務フローを設計。
店舗運営、ホールスタッフの動きなど、あらゆるものをマニュアル化、標準化していく。

徹底的な標準化。マニュアル化。

単純な話だが、これの有り無しが、2桁の差として現れる。
また、これは各店舗に「シェフ」不在を意味する。「シェフ」はマニュアルなのである。

日本の飲食店の場合、とかく「ホンモノ志向」が多い。それは良いことである。そうしたホンモノの味をこそ、世界に広めたい。個人的には筆者もそれを望む方である。

しかし、1万を超える巨大飲食店事業者に飛躍するには、必要不可欠。そして、そうした標準化は、現在のところ、日本の飲食業は得意ではない。

「日本人は得意ではない」というのは、誤りだ。

日本の製造業は、その工場において、徹底的なマニュアル化、標準化、そしてクオリティの向上を絶え間なく行ってきている。世界中に工場を作り、生産効率を上げてきている。
ものづくり、製造業の海外工場立ち上げなどを担ったような人材が、飲食業に流れていけば、2桁の違いを1桁違いくらいまでには持っていけるのではなかろうか。そういう想像をせずにはいられない。(ただ、店舗の展開数と、味のレベルというのはトレードオフで、どこまで味の低下に我慢が出来るか、、、というのも問題である)

アジアではどの都市に進出するべきか?

独資による参入、JV、フランチャイズ、様々な形態が考えられるわけだが、アジアだとどこがベストとなるのだろうか。
外資規制がある国もあるため、全てを独資では参入できない。

やはり2億5000万人近い人口を有するインドネシアだろうか・・・?

ここで国単位の人口から議論を始めてはいけない。
当然ながら、食とはその地域に根ざした展開となる。先のマクドナルドのような、チェーン展開ならば単純な人口や1人あたりGDPから計算していけばよいが、目指すゴールが世界で数百店舗から1000店舗。その場合は、「都市」で考えていく必要がある。

東南アジアの各都市人口

*1人あたりGDPは、表中の都市での指標。つまり、都市GDP/都市人口。東京の数値が高いのは、近隣の県よりの流入、昼間人口は2500万人を超えることから数値が高くなっている。実質値は、あらい集計で$50,000程度と見込まれる。
*ここで東京圏とは、東京、神奈川、千葉、埼玉。大阪圏とは、大阪、京都、兵庫を指す。

都市圏の大きさだけで見たらジャカルタ

単純な都市圏の人口のみで判断するならジャカルタとなる。

しかしながら、日本企業が展開する飲食サービスのターゲットはアジアでは中間層以上の層とかんがえるべきで、ジャカルタ近郊含めた3000万人の人口の内、ターゲットとなり得るのはせいぜい500万人から最大でも1000万人程度ではないだろうか。(アジア各国で所得別の人口がなかなか公表されておらず、常に推計となることを念頭に入れておく必要がある)

ここで、人の集まり具合という少し緩い目線で、似たもの探しをしてみたいと思う。

シンガポールと東京23区

バンコクと大阪府
バンコク都市圏と大阪圏

クアラルンプールと福岡市
クアラルンプール都市圏と福岡県(九州)

実際、大阪、東京、シンガポール、クアラルンプールで暮らし、バンコクと福岡には何度も足を運んだ身としては、この組み合わせは感覚的に似ている。
クアラルンプールは都市ながら、山や森林が都市の中に点在し、それは九州の高速道路を車で走らせている感覚に似ている。
一方、バンコクは、あの危うさ、ゴチャゴチャ具合、多様性、独創的な食べ物群は大阪に近い気がする。

しかし、実は姉妹都市で議論するなら、クアラルンプールと大阪市、バンコクと福岡市が姉妹都市関係となっており、筆者が述べる「似てる」とは真逆の組み合わせとなっている。

ターゲット人口は、その都市圏に存在する人たちの内、日系店舗がターゲットできうる中間層以上の人々を表す。ジニ係数、国連、ADB、JBICなど各種統計データからの概算値である。また、日系店舗平均ランチ価格は、目安を考えて頂ければ良い。日常的な生活の中で行くランチ、定食屋のイメージ。それと同等レベルの物が各国でどの程度で売られているか。

シンガポールは、東京の2倍〜2.5倍、ジャカルタは最新のショッピングモールで高級志向が高く、東京より高い場合が多い(そしてそれほど美味しくない)。デリーは、日本食と呼べる店舗がまだなく、ホテルに入る店舗など限られるため、価格が高どりまりしている。

シンガポール、クアラルンプール、バンコクは相当数日本飲食店が出店されている。良い意味で「平均的な日本食が食べれるレストラン」が多数存在する。

そして、クアラルンプールやタイのことを、いまだに単なる新興国と思っている日本人は、「この値段の日本食を現地の人は普通に来て食べるのか?」と驚くだろう。

東京より魅力的で大きな都市は「地球」には存在しない

東京、東京圏は「地球」上で最大の都市圏である。

これは今後20年程度(いやもっと)は変わらない。
ニューヨークでも、ロンドンでも、上海でも、ムンバイでもなく、東京圏は実は「地球」上で圧倒的に最大の都市圏なのである。
事実、ミシュランの★が付いたレストラン数も東京が世界最大であるのは有名な話だ。

大阪圏も「地球」で見た場合、とてつもなく大きな都市圏である。
東京都には約57000の飲食店が存在し、大阪府だけでも、38000店舗を超える。都市国家シンガポールには7000店舗弱しか存在しない。
人口1万人あたりの飲食店舗数で比べた場合、東京は43店舗、大阪43店舗、シンガポール13店舗。

シンガポールはとてもレストランが少ない?

いや、逆である。東京と大阪が、世界的にみて、異様なほどレストランが多いだけである。

東京も大阪も「デカイ」となれば、もはや海外に行く意味はないのか?
いや、そうではない。

東京や大阪がいかに大きくとも、海外に出る価値は極めて大きい。

シンガポールはまだ人口1万人あたり13店舗しかなく、今後3倍くらい増えたとしても、大阪レベルだということだ。それくらいの成長余地はある。シンガポールでさえこの状況であり、他のアジア諸国の都市は言わずもがなである。
アジアのどの都市も、まだまだ飲食店が増える余地が多分にある。
かと言って、海外が、誰でも行けば儲かるようなフロンティアではない、と認識することも重要だ。

それでもなおなぜ海外か?

なぜか?

なぜだ?

極めて単純な理由。

平均年齢と人口の増加。これに尽きる。

 

アジア各国の平均年齢と人口増加率

1%の増加と、1%の減少か?

これは極めて大きな数字である。1億人の国家があり、一方は毎年1%の増加。他方は毎年1%の減少。10年後、この国の人口は、1億1046万人と9044万人となり、約2000万人の開きができることになる。

アジア諸国は若く、そして日本よりも人口増加率が2%も高く、これから経済発展していく。

飲食は胃袋の大きさで決まる。

日本より平均年齢が20歳も若い国家は、1人あたりの飲食量も日本と比べ物にならないくらい大きいだろう。フィリピンなどまだ平均年齢が22歳である。人口は1億人を超えたところ。その潜在規模は末恐ろしく大きい。

都市で考える必要があると述べた。各国の首都における平均年齢や増加率は、国全体に比べてどちらも高い指標となる。平均年齢は首都の方が高く、人口増加率も首都の方が高い(日本で東京への人口集中が進んでいるのと同じように)。

極端な言い方をするならば、おじいさんおばあさんなど胃袋がそれほど大きくなく、人口が減少していく都市と、若い人たちがわんさかいて、人口が増加していく都市。
どちらをビジネスのベースとするか、という問題となる。
(決して、日本の地方都市を批判するつもりはなく、また日本の地方創生は筆者のライフテーマでもあるので、それについては別の機会でポストしたいと思う)

東南アジアの華僑は、倭僑の200倍

歴史的な背景もあり、アップル2アップルでは比べることはできない。
華僑の多くは、過去数百年に渡り、アジアに移住し進出してきているからだ。

例えば、東南アジアに進出している中華系の人と、日系の人の規模を比べてみたい。
シンガポールとマレーシアは特に中華系の人が多い。中華系、中国系とは、父母の代、祖父母の代、さらには3代前に大陸からこの地に移住してきたような人々を指す。各国で統計の取り方に差があるため、厳密な比較は出来ないものの、一言でいうと「多い」となる。

一方、日系。この場合は、ほとんどは企業からの赴任者とその家族である。彼の地に永住している日本人もいるが、その多くは一世代目である。父母の代、祖父母の代からの日系人はアジアではそれほど多くはない。

中国は日本のライバルである。

国単位のGDPで抜かれはしたが、もう一度日本が抜き去り、世界一になる。それを実現したいと思っている。
中国の人口は日本の10倍だ。
そして、今回取り上げた5カ国だけを見て欲しい。
この5カ国の中華系人口は既に3000万人。一方、日系は15万人。その差は200倍である。

日本の将来は、アジア圏に打って出る若者を早急に100万人レベルにまで増大し、日本の食をベースに日本をさらに売り込んでいく。
それと同時に、アジアでの日本ファンをさらに増やし、日本への移住者を増加。日本の人口減少に歯止めをかける。

今こそ地方から海外へ

日本の外食産業は23兆円を超える。それは、シンガポール1国のGDPをも凌駕する。タイやマレーシアのGDPと比較しても、5割6割の規模である。

言い換えるならば、23兆円もの経済規模を創りだす、「ジャパンフード」を提供できるプレイヤーが日本全国津々浦々にいるということだ。

海外の人たちにとって、どのようなものが日本食か?

寿司、ラーメン、天ぷら。
ほとんどの人が知っている3種の神器である。
続いて、豆腐、焼き鳥、えだまめ、トンカツ、うどん。

まだその程度である。
煮豚も知らない。ひじきも知らない。里芋と鶏の煮物。きんぴらごぼう。煮干し大根。そんなものは当然知らない。

つけもの?
黄色いタクワン程度しか知らない人がほとんどだ。

刺し身?
サーモン。サーモン。サーモン。ツナ(まぐろ)。サーモン。
海外の人たちのイメージは、こんなところだ。

日本には無限の宝がある。
2000年の間に列島で育まれた食文化がある。

世界は、アジアは、日本食を待っている。

先に挙げた表。博多一風堂、元気寿司、モスフードサービスの海外展開の状況を今一度見て頂きたい。
博多一風堂は中国で14店舗、元気寿司は香港で66店舗、モスフードサービスは台湾で246店舗と突出している。
これは、合弁会社によるところが大きい。
中国における博多一風堂の合弁パートナーは、香港の飲食事業者大手マキシムグループである。
実は、元気寿司のパートナーも同じくマキシムだ。
モスフードサービスは大手電機メーカーのTECOとの合弁である。

スターバックスジャパンも、オリジナルブランドのバッグを手がけていたサザビーリーグが40%を握る筆頭株主での合弁である。Starbuckも日本企業の力を借りて、日本での成功を手にしているのだ。

郷に入っては郷に従え。
こと食はローカルなものである。
日本の良さと現地の良さを併せ持ち、本来の日本食に加えて、現地ならではの側面でバージョンアップされた新たな日本食も輝きを持つだろう。
合弁でなければならない訳ではない。
が、合弁によって、現地有力企業とタッグを組み、その地に広めていく。拡大という意味合いでは、合弁がベターだろう。

そして、それはスターバックスやモスフードサービス、博多一風堂などのような大手のみが取れる戦略ではない。
日本に数店舗しかない中小企業の飲食事業者でも十分に可能である。

後は、外の世界へ踏み込む決意を固められるか。

目指すべきは地方から世界だ。
世界へ打って出ることが、地元の活性化に繋がる。
人はなぜ旅をするか。
その土地の風土で培われた食を求めるからだ。

地方から海外に新たな日本食を持ち込むことで、世界各国の人たちは思うだろう。

「いつか、本場の味を食してみたい」

地方活性化のカギは、海外展開である。
訪日外国人の観光客が増えている。それを地元へ呼び込むための、最善、最速の手段は、地元の飲食事業者が海外展開することである。

世界は、アジアは待っている。

「その味」は世界で光る。

p.s.
ちなみに、「おはぎ」を世界展開するのが筆者の夢である。


筆者紹介:小林慎和(こばやしのりたか)

Diixi Founder and CEO、Yourwifi Founder and CEO。ビジネスブレークスルー大学准教授。

大阪大学大学院博士課程卒。工学博士(コンピュータサイエンス)。野村総合研究所、グリーを得て現職。2社をシンガポールにて経営。「日本の世界展開を加速させる」をミッションにCrowdSekaiというサービスを提供中。海外展開の専門領域は、IT、モバイル、スマホ、飲食、日本の伝統工芸、雑貨、そして教育。

前回のソーシャルゲーム 業績下方修正のgumi! しかしソーシャルゲーム海外展開の成功の芽がそこにはあるに続いて、今回は食を取り上げてみた。次回は教育をテーマにしたポストをする予定。


参考文献:http://www.demographia.com/db-worldua.pdf, http://www.demographia.com/db-worldua.pdf, 「BOP超巨大市場をどう攻略するか」日本経済新聞出版社(自署)、博多一風堂ウェブサイト、元気寿司ウェブサイト、モスフードサービスウェブサイト、スターバックスジャパンウェブサイト、サザビーリーグウェブサイト。

Leave a Comment